饗庭 篁村 作 木曾道中記
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第六囘
石荒坂を過ぎ曲折して平地に出れば即ち長久保なり宿の家並よく車多し石荒坂にて下駄黨も草鞋派も閉口したれば此より車に乘る此邊平地とは云へ三方山にて圍ひ一方は和田峠に向ツて進むなれば岩大石ゴロタ石或ひは上り或は下る坂とまでならねど凸凹多く乘る者は難儀なれど挽夫は躍るもガタツクも物とはせず風の如くに飛び行けば心づもりより時は早く午後三時半和田へ着し緑川といへる高大なる寒げなる家へ泊りたり和田峠は中仙道第一の高山また絶所難塲なりと聞けば・・・