中野 鈴子 作 今日はよく晴れ上がって読み手:アン荻野(2025年) |
今日はよく晴れ上がって
村じゅうの苗代に種がまかれた
鍬では切れない土のかたまり 切り株の切れ端を深く埋める
手で埋めて撫でてゆく
きれいに水をはって消毒した種をまく
雨のふらない風の吹かない晴れた日にまく
わたしは外へ立ちながら苗代の人だかりの方をながめていた
いろりの場所ほども耕されたらと笑われながら田圃に入り
足りないところは田圃を売り
病気の母を放っておき 湯もわかさず
破れた傘もそのままにして
わたしは少しずつ上手になっていった
・・・