正宗 白鳥 作 私も講演をした読み手:小林 きく江(2025年) |
圓本續出の時代にはこの宣傳に利用されたためか、文學者の講演が盛んであつたが、このごろはあまり流行しなくなつた。文筆業者のうちでも、新聞記者とか政治、經濟の評論家とかいふ種類の人々は、演説にも馴れてゐて、自然上手になつてゐる譯だが、小説家や詩人のやうな純文學者は概して演壇向きでないやうである。だから聽衆の方でも知名の文人の顏を見るだけの興味で會場へ行くので、演説そのものに感心することは甚だ稀なのではないかと思はれる。文學者講演會の次第に流行しなくなつたのも、そのせゐではあるまいか・・・