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宮沢 賢治

春と修羅 無声慟哭

読み手:齊藤 雅美(2025年)

春と修羅 無声慟哭

著者:宮沢 賢治 読み手:齊藤 雅美 時間:3分48秒

 無声慟哭

こんなにみんなにみまもられながら
おまへはまだここでくるしまなければならないか
ああ巨きな信のちからからことさらにはなれ
また純粋やちひさな徳性のかずをうしなひ
わたくしが青ぐらい修羅をあるいてゐるとき
おまへはじぶんにさだめられたみちを
ひとりさびしく往かうとするか
信仰を一つにするたつたひとりのみちづれのわたくしが
あかるくつめたい精進のみちからかなしくつかれてゐて
毒草や蛍光菌のくらい野原をただよふとき・・・

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