閉じる

閉じる

中野 鈴子

読み手:アン荻野(2025年)

著者:中野 鈴子 読み手:アン荻野 時間:3分37秒

妹は出かけて行った
一か月に一回の面会を 三か月のばして やっと出かけて行った

タンスの底の しめっぽくなっているきものを引っぱり出し
右と左のびっこの足袋をはいて――

妹はモチ米を一斗さげて行った
米を代えて汽車賃をつくるためだった
停車場 汽車の中 歩く道にもヤミ米テキハツの警官が立っている
妹は
一斗の米をふた包みにし、軽い風呂しき包みにみせかけ奥さん風に停車場を降りた・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.