宮沢 賢治 作 春と修羅 白い鳥読み手:齊藤 雅美(2025年) |
白い鳥
みんなサラーブレツドだ
あゝいふ馬 誰行つても押へるにいがべが
よつぽどなれたひとでないと
古風なくらかけやまのした
おきなぐさの冠毛がそよぎ
鮮かな青い樺の木のしたに
何匹かあつまる茶いろの馬
じつにすてきに光つてゐる
(日本絵巻のそらの群青や
天末の turquois はめづらしくないが
あんな大きな心相の
光の環は風景の中にすくない)
二疋の大きな白い鳥が
鋭くかなしく啼きかはしながら
しめつた朝の日光を飛んでゐる
・・・