山川 方夫 作 お守り読み手:小林 きく江(2025年) |
――君、ダイナマイトは要らないかね?
突然、友人の関口が僕にいった。四、五年ぶりでひょっこり銀座で逢い、小料理屋の二階に上りこんで飲んでいる途中だった。
関口とは、高校までがいっしょだった。いま、彼は建築会社につとめている。だからダイナマイトを入手するのもさほど難しくはないだろうが、いかに昔から変わり者だった彼にしても、その発言はちょっと突飛だった。
――べつに。もらっても使いみちがないよ、ぼくには。
と、僕はいった。
――いま、ここにもってるんだけどな。
関口はいった・・・