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宮沢 賢治

春と修羅 オホーツク挽歌

読み手:村田 いずみ(2025年)

春と修羅 オホーツク挽歌

著者:宮沢 賢治 読み手:村田 いずみ 時間:8分27秒

 オホーツク挽歌

海面は朝の炭酸のためにすつかり銹びた
緑青のとこもあれば藍銅鉱のとこもある
むかふの波のちゞれたあたりはずゐぶんひどい瑠璃液だ
チモシイの穂がこんなにみじかくなつて
かはるがはるかぜにふかれてゐる
  (それは青いいろのピアノの鍵で
   かはるがはる風に押されてゐる)
あるいはみじかい変種だらう
しづくのなかに朝顔が咲いてゐる
モーニンググローリのそのグローリ
  いまさつきの曠原風の荷馬車がくる
  年老つた白い重挽馬は首を垂れ
  またこの男のひとのよさは・・・

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