宮沢 賢治 作 春と修羅 オホーツク挽歌読み手:村田 いずみ(2025年) |
オホーツク挽歌
海面は朝の炭酸のためにすつかり銹びた
緑青のとこもあれば藍銅鉱のとこもある
むかふの波のちゞれたあたりはずゐぶんひどい瑠璃液だ
チモシイの穂がこんなにみじかくなつて
かはるがはるかぜにふかれてゐる
(それは青いいろのピアノの鍵で
かはるがはる風に押されてゐる)
あるいはみじかい変種だらう
しづくのなかに朝顔が咲いてゐる
モーニンググローリのそのグローリ
いまさつきの曠原風の荷馬車がくる
年老つた白い重挽馬は首を垂れ
またこの男のひとのよさは・・・