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宮沢 賢治

春と修羅 火薬と紙幣

読み手:齋藤 こまり(2025年)

春と修羅 火薬と紙幣

著者:宮沢 賢治 読み手:齋藤 こまり 時間:3分43秒

 火薬と紙幣

萱の穂は赤くならび
雲はカシユガル産の苹果の果肉よりもつめたい
鳥は一ぺんに飛びあがつて
ラツグの音譜をばら撒きだ
   古枕木を灼いてこさへた
   黒い保線小屋の秋の中では
   四面体聚形の一人の工夫が
   米国風のブリキの缶で
   たしかメリケン粉を捏ねてゐる
鳥はまた一つまみ 空からばら撒かれ
一ぺんつめたい雲の下で展開し
こんどは巧に引力の法則をつかつて
遠いギリヤークの電線にあつまる・・・

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