上村 松園 作 四条通附近読み手:ミカド ココ(2025年) |
四条柳馬場の角に「金定」という絹糸問屋があって、そこに「おらいさん」というお嫁さんがいた。
眉を落としていたが、いつ見てもその剃りあとが青々としていた。
色の白い、髪の濃い、襟足の長い、なんとも言えない美しい人だった。
あのような美しい、瑞々した青眉の女の人を、わたくしは母以外に識らない。
お菓子屋の「おきしさん」も美しい人であった。面屋の「やあさん」は近所でも評判娘だった。
面屋というのは人形屋のことで、「おやな」という名であったが、人々は「やあさん」とよんだ。
舞の上手な娘さんで、ことに扇つかいがうまく、八枚扇をつかう舞など、役者にも真似ができないと言われたほどで、なかなかの評判であった・・・