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泉 鏡花 作

雪靈續記

読み手:ヨシオカ ミエコ(2025年)

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雪靈續記

著者:泉 鏡花 読み手:ヨシオカ ミエコ 時間:26分14秒

   一

 機會がおのづから來ました。
 今度の旅は、一體はじめは、仲仙道線で故郷へ着いて、其處で、一事を濟したあとを、姫路行の汽車で東京へ歸らうとしたのでありました。――此列車は、米原で一體分身して、分れて東西へ馳ります。
 其が大雪のために進行が續けられなくなつて、晩方武生驛(越前)へ留つたのです。強ひて一町場ぐらゐは前進出來ない事はない。が、然うすると、深山の小驛ですから、旅舍にも食料にも、乘客に對する設備が不足で、危險であるからとの事でありました。
 元來――歸途に此の線をたよつて東海道へ大廻りをしようとしたのは、・・・

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