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小山内 薫 作
読み手:池戸 美香(2014年)
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私の実見は、唯のこれが一度だが、実際にいやだった、それは曾て、麹町三番町に住んでいた時なので、其家の間取というのは、頗る稀れな、一寸字に書いてみ ようなら、恰も呂の字の形とでも言おうか、その中央の棒が廊下ともつかず座敷ともつかぬ、細長い部屋になっていて、妙に悪るく陰気で暗い処だった。そして 一方の間が、母屋で、また一方が離座敷になっていて、それが私の書斎兼寝室であったのだ・・・