夢野 久作 作
読み手:今 美佳子(2026年)
お天気が続いて、どこの田圃も水が乾上がりました。
太郎のお父さんも百姓でしたが、自分の田の稲が枯れそうになりましたので、毎日毎日外に出て、空ばかり見て心配をしておりました。
太郎は学校から帰って来まして鞄をかたづけるとすぐに、
「お父さんは」
と尋ねました。
お母さんは洗濯をしながら、
「稲が枯れそうだから田を見に行っていらっしゃるのだよ」
と悲しそうに云われました。
太郎はすぐに表に飛び出して田の処に行って見ると、お父さんが心配そうに空を見て立っておいでになりました。
「お父さん、お父さん。雨が降らないから心配してらっしゃるの」
と太郎はうしろから走り寄って行きました・・・
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