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林 芙美子 作

新生の門
――栃木の女囚刑務所を訪ねて

読み手:松岡 初子(2026年)

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新生の門 ――栃木の女囚刑務所を訪ねて

著者:林 芙美子 読み手:松岡 初子 時間:26分40秒

 わたしは刑務所を見にゆくと云うことは初めてのことです。早い朝の汽車のなかで、わたしは呆んやり色々のことを考えていました。
 この刑務所をみにゆくと云うことは、本当は一ヶ月前からたのまれていたのですけれど、何だか自分の気持ちのなかに躊躇するものがあって、のびのびに今日まで待ってもらっていたのです。
 朝の汽車はたいへん爽かに走っています。野も山も鮮やかな緑に萌えたって、つつじの花の色も旅を誘うように紅い色をしていました。わたしは、その一瞬の飛んでゆく景色にみとれながら、女囚のひとたちをみにゆく自分の気持ちを何だか残酷なものにおもいはじめているのです。わたし自身、人間的な弱点をたくさん持っていますせいか、ほんとうはこうした刑務所見学なんか困った気持ちになるのです、・・・

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