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紫式部  与謝野 晶子

源氏物語 紅葉賀

読み手:麻中 恒子(2020年)

源氏物語 紅葉賀

著者:紫式部/与謝野 晶子 訳 読み手:麻中 恒子 時間:59分47秒

青海の波しづかなるさまを舞ふ若き心 
は下に鳴れども                     (晶子)

 朱雀院の行幸は十月の十幾日ということになっていた。その日の歌舞の演奏はことに選りすぐって行なわれるという評判であったから、後宮の人々はそれが御所でなくて陪観のできないことを残念がっていた。帝も藤壺の女御にお見せになることのできないことを遺憾に思召して、当日と同じことを試楽として御前でやらせて御覧になった。
 源氏の中将は青海波を舞ったのである。二人舞の相手は左大臣家の頭中将だった。人よりはすぐれた風采のこの公子も、源氏のそばで見ては桜に隣った深山の木というより言い方がない・・・

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