閉じる

閉じる

宮沢 賢治

オツベルと象

読み手:つかさ(2020年)

オツベルと象

著者:宮沢 賢治 読み手:つかさ 時間:26分

   ……ある牛飼いがものがたる

第一日曜

 オツベルときたら大したもんだ。稲扱器械の六台も据えつけて、のんのんのんのんのんのんと、大そろしない音をたててやっている。
 十六人の百姓どもが、顔をまるっきりまっ赤にして足で踏んで器械をまわし、小山のように積まれた稲を片っぱしから扱いて行く。藁はどんどんうしろの方へ投げられて、また新らしい山になる。そこらは、籾や藁から発ったこまかな塵で、変にぼうっと黄いろになり、まるで沙漠のけむりのようだ・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.