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寺田 寅彦

瀬戸内海の潮と潮流

読み手:青柳 陽一(2020年)

瀬戸内海の潮と潮流

著者:寺田 寅彦 読み手:青柳 陽一 時間:8分18秒

 瀬戸内海はその景色の美しいために旅行者の目を喜ばせ、詩人や画家の好い題目になるばかりではありません。また色々な方面の学者の眼から見ても面白い研究の種になるような事柄が沢山あります。一体、あのような込み入った面白い地形がどうして出来たかという事は地質学者の議論の種になっているのです。また瀬戸内海の沿岸では一体に雨が少なかったり、また夏になると夕方風がすっかり凪いでしまって大変に蒸暑いいわゆる夕凪が名物になっております。これらはこの地方が北と南に山と陸地を控えているために起る事で、気象学者の研究問題になります。しかし、ここには私はただ少しばかり瀬戸内海の中の水の運動の事について御話ししましょう・・・

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