閉じる

閉じる

紫式部  与謝野 晶子

源氏物語 花宴

読み手:麻中 恒子(2021年)

源氏物語 花宴

著者:紫式部/与謝野 晶子 訳 読み手:麻中 恒子 時間:24分6秒

春の夜のもやにそひたる月ならん手枕
かしぬ我が仮ぶしに    (晶子)

 二月の二十幾日に紫宸殿の桜の宴があった。玉座の左右に中宮と皇太子の御見物の室が設けられた。弘徽殿の女御は藤壺の宮が中宮になっておいでになることで、何かのおりごとに不快を感じるのであるが、催し事の見物は好きで、東宮席で陪観していた。日がよく晴れて青空の色、鳥の声も朗らかな気のする南庭を見て親王方、高級官人をはじめとして詩を作る人々は皆探韵をいただいて詩を作った。源氏は、
「春という字を賜わる」
 と、・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.