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田中 貢太郎

火傷した神様

読み手:齊藤 雅美(2022年)

火傷した神様

著者:田中 貢太郎 読み手:齊藤 雅美 時間:14分12秒

   一

 天津神国津神、山之神海之神、木之神草之神、ありとあらゆる神がみが、人間の間に姿を見せていたころのことであった。
 その時伊豆国に、土地の人から来宮様と崇められている神様があった。
 伝説にもその神様がどんな風采をしていたと云うことがないから、それははっきり判らないが、ひどく酒が好きであったと云うところからおして、体が大きくてでっぷりと肥り、顔は顔で赧く、それで頬の肉がたるみ、そして、二つの眼は如何にも柔和で、すこしの濁気のない無邪気な光を湛えていたように思われる・・・

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