閉じる

閉じる

太宰 治 山崎 富栄

雨の玉川心中 遺書

読み手:ちくわさん(2022年)

雨の玉川心中 遺書

著者:太宰 治 山崎富栄 読み手:ちくわさん 時間:4分33秒

 私ばかりしあわせな死に方をしてすみません。奥名とすこし長い生活ができて、愛情でもふえてきましたらこんな結果ともならずにすんだかもわかりません。山崎の姓に返ってから死にたいと願っていましたが……、骨は本当は太宰さんのお隣りにでも入れて頂ければ本望なのですけれど、それは余りにも虫のよい願いだと知っております。太宰さんと初めてお目もじしたとき他に二、三人のお友達と御一緒でいらっしゃいましたが、お話を伺っておりますときに私の心にピンピン触れるものがありました。奥名以上の愛情を感じてしまいました。御家庭を持っていらっしゃるお方で私も考えましたけれど、女として生き女として死にとうございます・・・

Copyright© 一般社団法人 青空朗読. All Rights Reserved.