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太宰 治

読み手:齊藤 雅美(2022年)

著者:太宰 治 読み手:齊藤 雅美 時間:30分44秒

 この津軽へ来たのは、八月。それから、ひとつきほど経って、私は津軽のこの金木町から津軽鉄道で一時間ちかくかかって行き着ける五所川原という町に、酒と煙草を買いに出かけた。キンシを三十本ばかりと、清酒を一升、やっと見つけて、私はまた金木行の軽便鉄道に乗った。
「や、修治。」と私の幼名を呼ぶ者がある。
「や、慶四郎。」と私も答えた。
 加藤慶四郎君は白衣である。胸に傷痍軍人の徽章をつけている。もうそれだけで私には万事が察せられた・・・

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