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萩原 朔太郎

中原中也君の印象

読み手:土屋 由美子(2022年)

中原中也君の印象

著者:萩原 朔太郎 読み手:土屋 由美子 時間:4分17秒

 中原君の詩はよく讀んだが、個人としては極めて淺い知合だつた。前後を通じて僅か三囘しか逢つて居ない。それも公會の席のことで、打ちとけて話したことはなかつた。ただ最後に「四季」の會で逢つた時だけは、いくらか落付いて話をした。その時中原君は、強度の神經衰弱で弱つてることを告白し、不斷に強迫觀念で苦しんでることを訴へた。話を聞くと僕も同じやうな病症なので、大に同情して慰め合つたが、それが中原君の印象に殘つたらしく、最近白水社から出した僕の本の批評に、僕の人物を評して「文學的苦勞人」と書いてる・・・

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