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河合香織さんのポエム

ー くもっこ ー

はじめて4しまいのおでかけ

読み手:水谷 ケイコ(2021年)

 きのうは たのしかったなぁと、フワァ~ン あくびをしたくもっこは、お日さまのぽっこりの かおをのぞきこむと、
「おはよう。お日さまのぽっこり。」
「くもっこ、はい、おはよう。」とあいさつしたら、
くもりんが目をパチッとあけました。
 それからふたごの くもみんとくもたんは、もうすっかり おきて、おとうちゃんとおかあちゃんの いうことをよくきいていたのでした。
「くもみんおねえちゃん、くもたんおねえちゃん、おはよう。」
「おとうちゃん、おかあちゃん、おはよう。」
「くもっこ、くもりん、おはよう。」
いつも元気にあいさつをします。
 おかあちゃんは、くもっこにこう言います。
「なにかあったら、お日さまのぽっこりに言うんですよ。いいかい?」
それにこたえるように、
「おかあちゃん、どうして、お日さまのぽっこりに言うといいの?」 
 ふしぎそうなかおをして言うのでした。
「お日さまのぽっこりは、いつもみんなのことを、見まもってくれるし、やさしいでしょ!
おかあちゃんね、きっとね、かみさまとちがうかなって。」
くもっこもたしかになぁ、くふくふ かわいくうなづきました。
 いよいよ はじめて4しまいの おでかけです。
 おとうちゃんとおかあちゃんは、おみおくりをしています。
 とおくから、雲の4しまいの雲の子たちが、かさなりあって、4しまいが言いました。
  「おとうちゃーん! おかあちゃーん! 行ってくるねっ! 夕方には、お家に帰ってきます。」
と言いながら行きました。
 4しまいは、重なりあったり、また、はなれたりとして、ゆらゆら進んで行くのでした。 

 ここは、森のもりっこさんのところでした。
 草や木は、まだ若草色をして、さくらが咲いていて、子リスさんや子ジカさん、子うまさんに野うさぎさん、野ねずみさんたちもいます。
 そしてここは、とても空気がおいしい森です。
 4しまいが、目を輝きながら一緒になって、
「ワァーーーッ、なんてすてきな森なの!」とうれしそうに叫ぶのでした。
重なりあっていた4しまいは、ポコ、ポコうかんでいます。
すると「おねえちゃーん、たっ、たすけてぇ~~~~~!」とくもりんの声がするので、くもたんとくもっこはくもみんおねえちゃんのおなかの中へ入って、くもりんを探して、ポコリン!と出てきました。
かわいいお顔をしたくもりんは、プカリンプカリン、うれしくてうれしくてたまりませんでした。
くもみんは、前の日におとうちゃんからくもりんのようすをよく聞かされていましたから、あっちを見たりこっちを見たりしているくもりんのことを見ています。
4しまいは、なにをして遊ぶかそうだんしました。
しまいなので思うことがいっしょなのです。
「いっせいせいの、鬼ごっこ!」
くもっ!とうなづきました。
くもりんは、くもみんおねえちゃんにおんぶしてもらいました。
さぁ、鬼ごっこの始まりです。

一匹の子リスさんが、
「あの雲さん、なんだい?うごきが早くないかい?」と思いました。
だって、それはくもっこたちが、鬼ごっこをしていますから。
子リスさんからそう聞こえてくると、くもっこは、おねえちゃんたちに
「子リスさんのところに、ちょっとだけ行ってくる」
と伝えると、びっくりしないように、フワフワそーっと子リスさんのほうへ近づいて行きました。
「なんだい、なんだい あの雲さん、こっちへ向かってくるっ!、
うわぁーーーーっ!」
 子リスさんは、口をパカッと開けたまま、くもっこをずっと追いかけるように見ていました。
「はじめまして、リスさん。」
「おわぁ!」
 子リスさんは、またまたおどろいたのです。
だって子リスは、今まで一度ども雲さんがしゃべるなど聞いたことがありませんでした。
 目をパチクリ、パチクリ、そしてちっちゃな手を目に当ててゴシゴシこすりまし
た。
やっぱりあの雲さんがしゃべっている・・と思ったのでした。
 
子リスさんは、勇気をふりしぼって言いました。
「ねぇーっ、雲さーん!きみは雲さんなのに、どうしてしゃべれるの??」
くもっこは、前にも聞かれたことがあったなぁと思い出しながら、
「わたしにも、よくわからないの!」と笑顔でこたえました。
子リスさんは、くもっこのやさしい笑顔にホッとしました。
子リスさんからそのことを聞いた森のもりっこさんにすんでいる
リスや野うさぎ、子ジカ、子うま、野ねずみたちがかけよってきました。
  「雲さん、あなたのお名前はなんていうの?」と野うさぎがきくと、
「くもっこです。はじめまして!」
「わーーーっ!しゃべった!」子リスさんの言うとおりだわ!とみんなが言っているのでした。
 「ねぇ、今日は、わたしのおねえちゃんといもうとたちもいっしょなの。ここにつれてきてもいい?」
くもっこは、さっきは子リスさんをびっくりさせて悪かったなと思いながら聞きました。
 みんなは、顔を見合わせながら言います。
「もちろん!いいに決まってるんじゃないか!、ねっ、みんな!」
 子リスさんは、キョトンとする目をしました。
野うさぎは、ピョコピョコ、かわいく飛び跳ねまわっています。
子ジカや子うまは、キラキラとした目でくもっこを見ています。
野ねずみたちは輪になって、楽しそうに「ルンタッタ、ルンタッタ」とステップをしています。
 その様子を見てくもっこは、くるりん!と一回転しなから、
おねえちゃんたちがいるところまで、ふわわ ふわわと行ったのでした。
 くもみんのおなかの中から、キョトリン、くもたんとくもりんがかわいい顔をのぞかせました。
くもっこは、森のもりっこさんにすんでいる子リスさんや動物さんのみんなとお話ししたことを話しました。
 「みんなをつれてきてもいいよと言ってくれてる」 
 そう伝えると、雲のみんなは、ランラン、目を輝かせています。
そしてくもっこは、くもみんのせかなにひょいと飛び乗り、くもみんとくもたんもくもっこのあとをおって森へ行きました。
 「やあ!みなさん、はじめまして!ようこそ!」子リスさんや森の動物さんたちがあいさつをしました。
 くもみんたちは、森のみんなが、
「しゃべった!」
と目をくるくるりん、驚いたことでしょう。
でも最初から話せなくて当たり前だもの。
 小さな声でくもみんたちがはずかしそうに言いました。
 「は、はじめまして。わたしは、ふたごのあねのくもみんで、こっちはふたごのいもうとのくもたんです。
そして、一番下のくもりんは、まだ赤ん坊なの。」 
 子リスさんたちは、
「なんてかわいい雲さんなんでしょう!」
と思っている様子で、ホワンと顔がまんまるくなっていました。
 くもっこたちは集まって、何かそうだんしています。
待つこと10分。
「子リスさん、わたしのせなかにお乗り。」
くもみんがいうと
「こ、こわくないかい? こわくないかい? ねぇ、くもみん!」
子リスさんは不安そうに聞きました。
するとくもたんがくもみんのおなかの中から、ぴょこりんと顔をのぞかせると、
「だいじょうぶ子リスさん。だって、わたしたちが重なりあうと力になって、リスさんは、かるいから平気なの。」
と伝えます。
それを聞いて安心した子リスさんは、くもみんにむかって一歩ずつ前に歩いて行きました。
 「さぁ行くよー!」
 4しまいのかけ声で、ふわっ!と浮き、フワフワゆっくりと空へ上がっていきます。
 「どうだい? 子リスさん!」
くもっこが聞くと、
「とても最高!」
初めて見る森の景色が子リスさんにとって夢のような、何ともいえない様子で答えました。
この広い森は、なんてすてきなんでしょう。
ささやきながら、あっという間に過ぎていくのでした。
 しばらくしてくもみんたちは、森のもりっこさんのところまで、子リスさんを送ってあげました。
 くもっこたちは、「夕方には、おうちへ帰らなくちゃならないの、また来るね!」と言いながら、
子リスさんや森の動物たちとバイバイ!しました。

 そしてくもっこは、くもみんのおなかの中へ入って、みんなとお家へ帰っていきました。

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