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河合香織さんのポエム

ー くもっこ ー

空のおまつり

読み手:川村 ゆかり(2021年)

 くもっこの部屋の七色のカーテンが、ふわりふわりゆれています。
 んぅ〜、背伸びをして、
「お日さまのぽっこり、おはよう。今日ははりきって照っているね。何かあるの?」
と、くもっこが言うと、
「くもっこ、おはよう。これから、空のおまつりのじゅんびだよ。」
と、お日さまのぽっこりが答えました。
 くもっこは目をパッチンと開けて、「なんだか楽しそう!」とワクワクしてきました。
 「おとうちゃん、おかあちゃん、おはよう。ねぇ、おとうちゃん!
さっきね、お日さまのぽっこりに聞いたんだけど、
『空のおまつり』はいつあるの?」
と、くもっこが聞きました。
 おとうちゃんは月のカレンダーを見て、「まだまだ先だなぁ…」とブツブツ。
「なんか、あやしい!」
くもっこが目をジロリ、おとうちゃんの方に向けると、おとうちゃんはガピューンッ!
「あっ!逃げた!!」
くもっこも「こういうときだけ早いんだから…」とブツブツ言っています。
「まぁいっか!」
 くもっこが爽やかな空をゆうゆうと海の方へ行くと、砂浜には人がいっぱいでした。
その砂浜に、ビニール袋や空きびんなどのゴミが捨てられていました。
 そのゴミをウミガメさんがパクリパクリ、パクパク、
「かんでもひきちぎれないや、それにうまくもないし、味もしないよ。」
と、言うのです。
 くもっこがウミガメさんの近くにやってきて、クンクン、クンクンクーン、
「あれ?あれ?やっぱりにおわないよ、ウミガメさん。」
それでものんきなウミガメさんは、またビニールをクラゲと間違えて食べていました。
どんどん息もできなくなって、あのウミガメさんは死んでしまったのです。
くもっこは「あのウミガメさんは何もしていないのになぁ…」と思いました。
 そして、海の真ん中へ、ゆららゆらら行くと、今度は「キュキュ!」とかわいい鳴き声が聞こえてきました。
見ると、幸せを運ぶと言われているイルカさんたちが、ジャンプをして遊んでいます。
 くもっこは「くもりんも一緒につれて来るべきだったなぁ。」と思いました。
 そして、イルカさんたちがびっくりしないように、そーっと空から見ていました。
でも、イルカさんたちには、もうくもっこの影が見えています。
知っているよという顔をして、
「キュキュ!」
ジャンプをしながら、
「はじめまして、くもっこちゃん!」
 1匹のイルカがあおむけになったまま、くもっこに初めて声をかけてくれました。
「はじめまして、イルカさん!
あなたが声をかけてくれて、嬉しくて嬉しくて胸が躍っているよ。」
 くもっこは、ふわわふわわふわりん、空で泳いでいるような気分でした。
 「ねぇ、イルカさん、少し聞いてもいい?さっきね、ウミガメさんが死んでしまったの。海の中では何が起きているの?」
 くもっこがイルカさんに聞いてみると、イルカさんは悲しそうに言いました。
 「水が汚くなって、サンゴが死んで、サンゴに隠れていたお魚さんたちがいるところもなくなって、困っているのよ。それに、タコさんやイカさんたちだって生き物だよ!それなのに…」
 くもっこは、何とかしてあげたくてもどうすればいいかわからずに、静かに聞いていました。
 イルカはまた話し始めました。
 「私ね、体が不自由な子供たちと遊ぶのが大好きなの。最初は誰だって緊張してしまったりするものなのよ。日にちはかかるけれど、少しずつ慣れてくると、カチンコチンな体がゆったりとした体になったり、出なかった声が出るようになったりするの。そのことがとってもうれしいよ!」
 イルカさんの話を聞いていると、くもっこはなんだかうれしくなりました。
 「あ、そうそう!イルカさん、『空のおまつり』は知っているの?」
 と、くもっこが聞きました。
 「あっ!すっかり忘れていたーっ!!今日の夜にあるからねと、かあちゃんが言っていたんだ!」
 イルカさんは、急いでお家に帰りました。
 くもっこは、「おとうちゃんもカレンダーを見て急いでどこかへ行っちゃったけど、さては忘れたなぁ!」と、クスクス笑いながら帰っていきました。
 帰ると、
 「くもっこ!さぁさぁ、これを着て。」
 と、おかあちゃんがお手製の浴衣を着せてくれました。
 「とってもかわいいわぁ!」
 と、くもっこはくるりん!回って見せます。
 「わぁ、ぴったりだわ!」
 そう言ったあと、おかあちゃんは体をグイーン、びよよよんと伸ばして、雲のじゅうたんになりました。
 その様子を見た四姉妹は、顔を見合わせて、
 「ワァーーー!おかあちゃんのじゅうたんだ!おかあちゃんのじゅうたんだ!」
 「さぁさぁ、みんなお乗り!」
 みんなを乗せたおかあちゃんのじゅうたんは、ふわわふわわ、お月さまのところまで行きました。
 すると、おとうちゃんが大太鼓をたたいて、盆踊りが始まったのです。
  ♪ ふわりん ふわりん 
   ふわふわふわわわわ
   ふわたん ふわたん
   もっこりんもっこりん
   もこもこ
   くるりん くるりん
   くるくるりんりん
   ふわりん ふわりん
   ふわふわふわわわ
   ふわたん ふわたん
   もっこりんもっこりん
   もこもこ
   くるりん くるりん
   くるくるりんりん ♪
 大太鼓のまわりをかこむように、雲さんたちが楽しく躍っています。
 流れ星の花火に、
 「素敵だね、おかあちゃん。」
 と、くもっこは目を輝かせて言いました。
 おかあちゃんは、
 「流れ星の花火はね、亡くなられた方も見ているのよ。」
 と教えてくれました。
 くもっこは、「あのウミガメさんも見ているのかなぁ。」と思いました。
 四姉妹は、雲のわたあめや雲のヨーヨー釣りをして思い切り遊んだあと、おかあちゃんのじゅうたんに乗って帰りました。

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